カウント2.99!!

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名もなきタイトルマッチ 石井智宏 VS EVIL

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悪魔のようなメイク、黒のフードに死神の鎌、『闇の帝王』をリングネームに冠するその男。一つ間違えれば「イロモノ」扱いされてもおかしくなかった男が、なぜ新日本プロレスにおいて唯一無二の地位を得たのか。答えはシンプル。「いい試合をしてきた」からだ。

 

闇の帝王誕生

EVILが新日本マットに登場したのは、2015年10月。

 

それまで一人ロス・インゴベルナブレスとして不穏な行動が多く見られた内藤哲也

「パレハ」(スペイン語で相棒の意味)として呼び込んだ男。それが「EVIL」だった。

 

マスクを脱いだ時、観客の頭上には「?」のが浮かんでいた。何週にもわたり、内藤哲也選手が「パレハ」アピールをしていた為に期待値は上がっていたのだが、是とも非ともとれない怪奇レスラーの登場にリング外もネット上も大いにざわついていた。

 

 そのイロモノがなぜファンの支持を得るようになったのか。答えは「プロ意識の高さ」だと私は思う。

 

EVILはずっと「いい試合」をしてきた。内藤とのタッグでWORLD TAG LEAGUE 2015に出場すると抜群のコンビネーションとパワーあふれるファイトで準優勝まで上り詰める。

 

その後はニュージャパンカップ石井智宏と激突し名勝負を繰り広げ、その後も石井に付き纏い、Road to INVASION ATTACK 2016尼崎大会にてROH世界TV王座を賭けて対戦。20分を超える激闘を繰り広げ、惜しくも敗戦した。

 

これをきっかけに後藤や柴田とも名勝負を繰り広げ、SANADAとのタッグでベルトを取ったりと幅広く活躍してきた。当初に比べればかなり饒舌になったが、決してキャラを崩さず、押しも押されもせぬポジションを獲得した闇の帝王。間違いなく今後の新日本プロレスを担っていく人(?)材の一人である。

 

「プロ」として

その帝王と相対したのが「名勝負製造機」石井智宏である。リングでは決してしゃべらない。派手なパフォーマンスしないし、メインで勝利してもマイクをしない。彼もまたプロ意識の塊である。

 

石井智宏は決して喋れないわけではない。事実、バックステージでは心を揺さぶるような言葉を放つし、ブログでは料理好き世話好き強面おじさんとして活躍している。

 

EVILと石井智宏。彼らには共通して、かなり高い「プロ意識」がある。自分を客観視できている。「ファンが自分に何を望んでいるか。」ということを理解しているから、ファンを越境させる言動ができる。逆に、それを裏切って「あっ!!」と驚くようなアクションを起こすこともできるのだ。

 

人間の外面と内面に生じる差を目の当たりにした時、人は心を惹きつけられる。それがいわゆる「ギャップ萌え」と言うやつで、ヤンキーが捨て犬を拾ったりするところを見て「こいつ根はいいやつなんじゃ?」と思ったりするのはこの心理が働いているからだ。

 

そのギャップを両者はうまく利用している。ダークネスワールド全開で入場するEVIL。闘争心むき出しの石井リングではファンが期待するバチバチな試合。それが良いフリとなり、ときおり見せる華麗なテクニックに目を奪われ、マイクやバックステージの言葉には重みが出る。

 

新日本プロレス内でも人気のある両者だが、決して優遇されてきたわけではない。石井はデビュー23年の43歳。新日本プロレスではIWGPもICも巻いたことがない。NEVERを長く巻いていたときは「試合がワンパターン」と由耶されていたこともあった。

 

EVILだって決して順風満帆なレスラー歴ではない。連勝中のオカダ・カズチカを倒したという大金星こそあったが、それ以外は一進一退。負けたり勝ったりの繰り返しである。

 

両者がやってきたことは、本当に「いい試合をする。」これだけだ。やはりレスラーの本質はこれだ。いい意味でギャップを利用する。そしていい仕事をする。二人から学ぶプロ意識は何処の業界でも通用することだと思う。

 

この試合、タイトルこそかかっていなかったが、ノンタイトルでもこのレベルの試合ができることを二人は現してくれた。いつか、両者の腰に、その働きにふさわしいベルトが巻かれることを願う。